デザイナーズ家具【ユーデザイナーズ】

アイリーン・グレイ

アイリーン・グレイ

Eileen Gray

アイリーン・グレイ

( 1878-1976 )
アイルランド

モダニズム建築を象徴する住宅の一つで、フランスのコートダジュールに建つ別荘「E1027」を設計したのがアイルランド出身の女性建築家であり、家具・インテリアザイナーのアイリーン・グレイです。
そして、モダニズムの父であり、近代建築の三大巨匠の一人とされるル・コルビュジエが生涯唯一その才能を羨んだとされる孤高のデザイナーともいわれています。

アイルランドのブラウンズ・ウッドで画家の父、貴族の血筋をもつ母のもとに生まれます。1902年からロンドンの美術学院でデザインを学び、その後1906年からはパリのアカデミーで芸術を学びました。当時、日本人学生であり、工芸家の篠原精造と出会ったことをきっかけに、漆工芸を習い作品を製作しました。

1920年にショールームギャラリーを開設してインテリアデザインを手がけ、1922年にはパリに自らのインテリアショップを開店させました。
その後、建築家としての道を進み始めた彼女は1927年から1929年にかけて、当時の恋人であった建築家のジャン・バドヴィッチと過ごすために「E1027」という別荘を設計しました。

結果的に彼女の代表作として現代にも残るE1027は、近代建築の巨匠ル・コルビュジエの「近代建築の5原則」を見事に再現した作品といわれる彼女の最高傑作です。
しかし、ル・コルビュジエがあまりの居心地の良さに壁画を残したことから、E1027はル・コルビュジエ作だとして建築の歴史から長いこと覆い隠されてきました。
彼が生涯唯一嫉妬心を抱いたともされる彼女の才能は、時代を超えてやっと今「E1027の真の作者はアイリーン・グレイ」であると明らかにされています。

E1027の別荘には、美意識が高く繊細な女性らしい感性を生かしたデザインが施されていますが、家の中に配置された家具も彼女自身がデザインしており、後に世界的に有名になる「ビベンタム」や「トランザット」、そして「E1027 サイドテーブル」などがあります。
中でもE1027 サイドテーブルは、ニューヨーク近代美術館に永久コレクションとして収められるデザイナーズ家具の名作です。

アイリーンが手がける家具は、住宅の建築素材である鋼管(スチールパイプ)素材を家具製作に取り入れるなど斬新で、その独創性の高さは家具の歴史における影響は多大なものであったといえます。
1950年代以降は、視力の悪化により製作活動を引退していますが、彼女が製作したシンプルで機能性の高いデザインと、住宅建築と融合した暮らしやすさや快適さを追求したインテリア作品は彼女が歳を追うごとに評価されていき、現代に至るまで長く受け継がれています。

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